| ●紙芝居【トーマじいさんの海】紙芝居制作:日野雄策(ガイア総合研究所) | 
						
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							|  | 音楽・・・歌(トーマじいさんは魚釣りの名人、いつもたくさん魚を捕った、だけど魚は無くならない、なぜなら彼は海と友達だから。海は何も言わないけれど、いつも見ているみんなのことを、だからみんなで海を守ろう、トーマじいさんが海を愛したように。) | 
						
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							|  | トーマじいさんは若い頃、村一番の漁の名人でした。 何メートルもある大きな魚を一人でつり上げたことは、今でも語り継がれるほどです。
 しかし、二十年前に漁でけがをして、それ以来魚釣りはしていませんでした。
 ある日、孫のピータが、トーマじいさんに話しがあると訪ねてきました。
 
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							|  | 「おじいさんが昔、漁の名人だったってほんと?」 「どうかな、名人とは思っていないが、人より魚のことは知っているつもりじゃ」
 「じゃあ、教えてほしいんだ。漁に出ても魚がとれないんだ」
 「とれない? 網の投げ方が悪いんじゃろ」
 「いや、網を投げるのは自信があるし、皆もうまいといっている」
 
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							|  | 「じゃあ、魚を見る目が悪いんじゃろ」 「いや、目は10キロ先の旗の文字までよく見える」
 「じゃあ、場所が悪いのか?」
 「昔から魚の集まるあの海でも、魚がいない」
 「魚がいない? あの海に、魚がいない?」
 「そうさ、どうして魚がいなくなったのか、教えてほしいんだ」
 「あの海に魚がいないなんて信じられん」
 
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							|  | 「おじいさん! あの海だけじゃなく、島の周りの海から魚がいなくなりはじめているのはどうしてなの?」 「なんだって! よし、見に行こう、あの海に!」
 「おじいさん、ほんと? もう海には出ないんだと思っていた・・・」
 「ああ、二十年ぶりじゃ・・・」
 トーマじいさんは、若かった頃を思い出していました。
 
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							|  | 次の日、トーマじいさんはエンジン付きの船にのり、あの海に向かいました。 「わしらの時代は、風で走っておったから、エンジンは苦手じゃ」
 「でも、エンジンの方が早く漁場に行ける」
 ピータの言葉に、トーマじいさんは首を横に振りました。
 「それはそうじゃが、この音では海の声がよく聞こえんし、この早さでは海のことがよく見えない。風の早さは、海の底まで見せてくれる」
 「へー、そんなものなのかなあ?」
 
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							|  | 船が着くと、おじいさんの顔は暗くなりました。 「なんて懐かしい風景だろう、この空の色、海岸線、そして目印の岩。だけど、水の上に油が浮いている。海岸にはビニール袋、浜辺には空き缶、そして森はあんなに減ってしまっている。私の知らない間に、あの美しかった海がこんなに汚れたなんて」
 トーマじいさんはがっくりと肩を落としました。
 
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							|  | それ以来、おじいさんはベッドに寝たきりになってしまいました。ピータは悲しみました。おじいさんを船に乗せたせいでこうなってしまったのだと、毎日自分を責めていました。 「おじいさん、ごめんなさい。僕が船に乗せたばかりに病気になってしまって・・・」
 
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							|  | ピータは悲しくて、毎晩砂浜で泣いていました。 「どうしたらおじいさんは治るだろう。神様、どうか僕に教えてください。僕にできることなら何でもします。神様、どうしたらおじいさんを助けることができるのか、教えてください・・・」
 ピータは泣きながら、砂浜にひざまずきました。すると・・・
 
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							|  | 海に浮かんだ月の影がだんだん人のかたちになり、見る間に美しい女神の姿になりました。 「ピータ。あなたはおじいさん思いですね。だから教えてあげましょう。海が元通りになれば、おじいさんはよくなるわ」
 「え? あの海が元通りになれば?」
 「そう、おじいさんとあの海はひとつ。あの海の痛みはおじいさんの痛みなの。あなたならできるわよ、あの海を元通りに・・・」
 そう言うと、女神は姿を変え、元の月影になりました。
 
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							|  | 気がつくと、ピータは砂浜で寝ていたのでした。 「そうだ、あれはきっと夢じゃない。あの海がきれいになれば、きっとおじいさんは治る」
 ピータはそうつぶやくと、走りはじめました。
 
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							|  | おじいさんが言うように、海の声を聞き、海を見つめながら、ピータはあの海にやってきました。 「こんなに空き缶が落ちているなんて、気がつかなかった。おじいさんの言うとおり、よく見てみると海も砂浜もゴミだらけだ。どれどれ・・・」
 
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							|  | 「一番多いのは・・・・   やっぱり鉄くずか・・・」 「二番目に多いのは・・・   空き缶・・・」
 「三番目は・・・   プラスチック・・・」
 
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							|  | 海から帰ると、ピータは図書館に行き、ゴミのことを調べはじめました。 「ゴミを集めても、集めたゴミをどうすればいいか分からない」
 「なになに、ゴミは分けて集めれば、資源になる?」
 「リサイクルって言うんだ、それを」
 「資源には限りがあり、使いすぎると地球温暖化で島が沈む? なんてことだ!」
 「まてよ、こっちはすごいぞ。ゴミは分けて集めて資源に変えると、お金になる?」
 「リサイクルはお金になるんだ・・・」
 「何が一番高いのかな?」
 
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							|  | 「へー、アルミ缶か。ジュースやビールの缶だね」 「アルミ缶は作るのにエネルギーがたくさん必要だけど、リサイクルだと30分の一になるんだ。つまり1個分で30個つくれるわけか」
 「次にスチール缶や鉄製品。缶詰の空き缶や鉄くずは、昔からリサイクルされている」
 「ペットボトルは溶かして、また同じ容器にしたり、服や靴を作ったりするんだ・・・」
 「こいつはすごい」
 
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							|  | ピータは早速、幼なじみのメーレにその話をしました。 「ゴミがお金になるなんて、信じられない」
 「本当なんだ。ほら、この本に書いてある」
 「でもそれは遠い国の話しでしょ」
 「違う、ゴミは全世界同じ問題なんだ。捨てればゴミだけど、分けて集めれば資源なのさ。それに、お金じゃなくて、おじいさんのいのちがかかっている」
 「いのち?」
 「あの海を元のようにきれいにすることが、おじいさんにしてあげられる僕の償いなんだ」
 「それで、どうやってゴミを集めるの?」
 「仲間で力を合わせて」
 
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							|  | その後、ピータの熱心な呼びかけに、仲間たちが集まりました。そして、アルミ缶、スチール缶、鉄くず、ペットボトルはもちろんのこと、自分たちで拾えるだけのゴミというゴミを拾い、資源になるものとならないものに分けました。 すると見る見る、あの海は美しくなっていきました。そして、リサイクルした資源の山は見る見る高くなっていきました。
 
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							|  | そんなある日、ピータにリサイクル船の船長から手紙が届きました。リサイクル船とは島々を巡り、リサイクルした資源を回収する船で、地球環境防衛隊が所有する船です。 ピータは図書館でこの船のことを知り、船長宛に手紙を書いたので。そして、いつか必ず島に来てもらいたいと願っていただけに、嬉しくて飛び上がりました。
 
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							|  | リサイクル船の到着で、街中がお祭りのようです。 ピータは仲間たちと集めた資源を袋に詰め、リサイクル船に持ってきました。すると、船の検査員が袋を開けて・・・
 「何だねこれは! だめだめ、ちゃんと分別できてない。こんなことじゃ引き取れないよ」
 なんと、ピータたちの袋の中には、他のゴミも混じっていたのです。
 「ごめんなさい! すぐに分別し直します」
 すると、そこにリサイクル船の船長がやってきました。
 「どうしたんだね、ピータ君?」
 「キャプテン、分別がこんなに大変だなんて、知りませんでした」
 「混ぜればゴミ、分ければ資源。ちゃんと分別すれば、受け取る方も嬉しいんだよ。私も手伝おう」
 船長がピータたちの手伝いをすると、ほかの船員たちも皆一緒になって手伝いはじめました。
 
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							|  | 1年が経ち、あの海は元のように美しい海に戻りました。海岸線や砂浜の景色からはゴミがなくなり、魚も増えてきました。昔のままに戻った白い砂浜には、トーマじいさんが元気に手を振っています。 すると、波の間からあの夜現れた女神の声が聞こえてきました。
 「ピータ。海をきれいにしてくれてありがとう・・・」
 「いえ、こちらこそ、ありがとう」
 
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							|  | 10年後、ピータはリサイクル船の船長になり、大海原を資源を集めて旅しているのだそうです。 
 音楽・・・歌(キャプテンピータはリサイクルの達人、毎日たくさん資源を集めた、だからゴミが減っている、なぜなら彼は海の友達だから。海は何も言わないけれど、いつも見ているみんなのことを、だからみんなで海を守ろう、キャプテンピータが海を愛したように。)
 
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